大学の三限と四限のあいだ。
半端に長い空きコマを持て余し、
カメラ片手にキャンパス裏のヤナギ並木へ。
幹の裂け目に、金属の滴のような光が揺れていた。
本州にはいない、北海道だけの特産種。
ジャコウカミキリ(Aromia moschata orientalis)だ。
翡翠から銅色へと移ろう体に、甘い麝香がかすかに漂う。
しかもその日は2頭がしっかり組み合い、
風に触角を揺らしながら静かに交尾していた。
成虫も幼虫もヤナギを棲処にし、
朽ちた材にトンネルを刻み世代をつなぐ。
小さなものを観る時、
同じく僕も、小さくなったような気持ちで生き物を見る。
そうすると、不思議と見えてくる世界がある。
2019年7月撮影

