池面をゆっくり撫でる風が、雲を映した水面をゆらゆらと揺らしていた。
光が、水面の揺らぎに沿って流れていく。
2021年。道北のとある沼、静かな時間の中で、
ヨツボシトンボがふわりと飛び上がり、枝の上にそっと止まる。
ずんぐりとしたフォルムと四つの黒い斑点を持った翅。
その姿には北海道の湿原だけでなく、
ヨーロッパや北米の湖沼でも、同じように風に乗っているのだろうと思わせるような風格がある。
今回はOM SYSTEMの150-400mmレンズで彼らの姿を追った。
テレコンバーター内蔵で最大1000mm相当まで伸びるこのレンズは、遠くの止まりものを柔らかなボケで引き寄せるのが得意で、ゆらめく池を背景にヨツボシトンボの羽化直後の翅の透明感や、北方系らしいがっしりとした胸の質感を余すところなく描き出してくれた。池の水紋がふわっと流れるようにぼけるおかげで、画面全体にリズムが生まれ、虫の軽やかな存在感が際立つ。
ヨツボシトンボは水辺に依存するため、
国内でも標高の高い湿原や池塘、道内の湖沼などで見かけることが多い。
景色に溶け込むこのトンボが撮影を通して、
不思議な広がりと身近さを一枚の写真に閉じ込めることができた気がしている。
少しすると茂みのなかを渡る風が少しひんやりしてきて、
レンズを通して見えるヨツボシトンボの姿は、なおさら魅力的に映った。

