ヒザグロナキイナゴというイナゴを知っているだろうか。
2024年の夏、草原の縁でふと足を止めた日のことだ。
乾いた風が茂みを撫で、草たちはそよぎながら音を立てていた。
そこで出会ったのは、小さなイナゴ。
ヒザグロナキイナゴ(Podismopsis genicularibus)。
名前のとおり後脚の膝が黒い、そんな特徴を持つバッタの仲間だ。
僕が撮ったのはオスだった。
オスは淡い黄褐色を帯びやや細身で、
前翅が幅広く寸詰まりに見える体つきをしている。
メスと比べると色や形がかなり違って見えることもあって、
同じ種類とは思えないほど印象が変わることがある。
メスには逃げられてしまい、撮影に至らなかった。
ヒザグロナキイナゴは日本では北海道だけで見られる稀な種類だと言われ、
特に道東で多く確認される。
草地や牧草地の縁、明るい草むらを好んでいて、
その場に留まる姿を見つけるとつい覗き込んでしまう。
昼間、草の茎に止まるオスは後脚の腿節(太もも部分)
を前翅にこすりつけて乾いた独特のシャカシャカという音を出す。
これは仲間へのサインであり、オスの持つコミュニケーションだ。

オスが鳴くほんの一瞬を切り取る。
そうすることで少しでも道東の夏の空気ごと、閉じ込められたらと思った。
