夏の午後、
風に揺れるオオハンゴンソウの群れの中で、
ひとつの黄色い花がふっと沈むように揺れた。
そこに降り立ったのは、
スジグロチャバネセセリ(hymelicus leoninus)。
くりりとした黒い瞳。
薄いストライプの翅。
花をひとつの小さな台座のように扱いながら、
静かに蜜へ口を伸ばしていた。
本州では数を減らし、
準絶滅危惧種になりつつある蝶。
けれど別の地域では分布を広げているという報告もある。
環境の変化か、植生の変化か。
オオハンゴンソウに対してスジグロチャバネセセリは小さく、
すぐにどこかへ紛れてしまう。
その対比が、写し取ることで、不思議な調和を生んだ。
花弁にそっと足をかけるその姿は、
まるで草原の精霊がふと姿をあらわしたようだった。
絶滅へ向かう場所もあれば、
そっと息を吹き返す場所もある。
自然の変化は「良い」や「悪い」だけでは語りきれない。
ただ、この蝶がこの花に降りたその一瞬を、
たしかに写真に残せたこと。
それが何よりもうれしかった。

